東北大学の深澤遊助教らの研究グループは、木材をエサとする木材腐朽菌の菌糸を培地上で培養し、エサとなる木片の大きさなどを変えた実験を行うことで、菌糸体の行動がどう変化するかを調べた。その結果、菌糸体は大きいエサには引っ越しやすいのに対して、小さいものにはなかなか移動しないことが分かったと13日に発表した。木材腐朽菌は枯木に定着して分解することでエネルギー源となる炭素を得ているグループの菌類。
研究では木材腐朽菌「チャカワタケ」の菌糸体を土壌培地で培養し、大きいエサ(木片)と小さいエサを、距離を変えて置いた場合行動の違いを観察した。
どの距離でも定着したが、木片から去るかどうかに、エサの距離が大きく影響していた。エサが近かった(1センチ)場合はもとの木片から去り新しい場所に引っ越したが、距離が遠い場合(15センチ)は定着しつつ木片からも去らなかった。
また、菌糸体がエサの探索に払ったコストを伸ばした菌糸の面積で評価すると、距離が遠いと菌糸面積が大きくなり、エサに引っ越しにくいことが分かった。
研究グループは「菌類の菌糸体の行動原理を解明することで、森林生態系の物質循環や樹木との共生関係における菌類の重要性がさらに理解できるようになる」としている。