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量子科学技術研究開発機構(QST)と近畿大学の研究グループは、超音波刺激によって引き起こされる脳神経活動の高まりにセンサー分子「TRPC6」が必要不可欠であると明らかにした。アルツハイマーやうつ病、統合失調症などの治療法開発に寄与するかもしれない。
近年、超音波で脳や手足の神経組織を刺激することで活動を調整できることが分かっていた。それを使って脳神経の活動に不調が生じる精神疾患を超音波照射で治療する方法が検討されているが、どのような仕組みで活動が誘導されているのかは不明であった。
グループは超音波照射と同時に脳神経の活動レベルを計測できる実験システムを構築。超音波によって脳神経の活動が誘導される現象をリアルタイムに捉えることに成功した。
実験システムを利用して、物理的な機械刺激(圧力)に対して反応するTRPC6が、超音波による神経活動の高まりに必須な分子であることを世界で初めて確認することに成功している。
グループは「TRPC6をターゲットとして効率よく超音波を脳に照射することによって、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患、うつ病や統合失調症などで低下した脳神経の活動を正常状態に回復させる治療法としての応用できる」と評価している。