人工装置で育成中のヒレタカフジクジラ
沖縄美ら島財団の冨田武照(とみた・たけてる)らのチームは2日、サメの人工子宮装置を開発したと発表した。深海ザメ「ヒレタカフジクジラ」の人為出産に成功したとしている。構造が簡単で軽い装置にすることで、野外での使用が初めて可能になった。装置は沖縄美ら海水族館(沖縄県国頭郡)で展示中だ。
人工子宮装置は存在しているが、作りは複雑で重さは1トンを超える。遠隔地で回収されたサメの出生個体には使えなかったり、人工羊水の交換作業が手間だったりする課題があった。
財団は従来の装置に「最小限の人工羊水で育成する」と「水ろ過フィルターを省略」、「水温維持に小型冷蔵庫を利用する」という変更を加えた。その結果、重量を40キロまで減らし、人力での移動が可能となった。
新たな装置を利用してヒレタカフジクジラ6尾を出生サイズまで成長させることに成功している。
冨田らは「これまで不可能だった胎仔の長時間搬送への道を開いたという点で画期的である」とコメント。「さらに装置の改良を進め、水族館における獣医療の充実と、野生個体の保全に貢献したい」としている。