広島大学
広島大学の研究グループは先月29日、うつ病に関係する脳部位「手綱核」(たづなかく)に異常を起こす細胞とその起源を特定した。脳を構成する「グリア細胞」がうつ病を引き起こすことを確認した初めての成果だとしている。新規の抗うつ薬の開発が期待されている。
うつ病は世界の全人口の約4%が苦しんでいるとされ、自殺や再発率が高いことから治療薬の開発が課題となっている。治療を受けても4割以上の患者で再び発生すると報告されており、新薬の開発が求められている。
グループは手綱核を構成する細胞の役割を明らかにするため、マウスを使って実験を行った。グリア細胞の1つで神経細胞の活動を調節する「アストロサイト」に着目して進めた結果、手綱核のアストロサイトは出生直後にタンパク質を発現させる領域から誕生していることが分かった。
このアストロサイトを光照射で活性化させると、神経細胞が過剰に働くことが判明。タンパク質「Kir」が関与していると分析した。グリア細胞がうつ病のような症状を引き起こす初めての成果だとしている。
グループは「研究を契機に、神経細胞の機能をその周りから調節するグリア細胞の機能を標的として抗うつ薬の開発が進むとよい」としている。