北海道大学の澤辺智雄教授らの研究グループは12日、メタゲノム技術を用い、マナマコの種苗生産の障害となる胃萎縮症の原因微生物を初めて推定した。Tenacibaculum属細菌が症状の原因であると推察。この細菌は、グラム陰性の比較的長い桿状の海洋細菌で、魚介類の病原性種を含むことが知られている。胃萎縮症はマナマコの浮遊養成の胃が退縮し、摂餌不良となることで、個体数の減少につながる原因不明の疾病。
今回、澤辺教授らが研究を行った背景には、乱獲による減少がある。マナマコの一大産地である北海道では、北海道立総合研究機構の酒井勇一主任主査が開発した種苗生産技術によって、マナマコの子どもの供給体制を構築している。だが、その過程で原因不明の疾病による減耗が確認されていた。
研究では同症となった幼生の微生物群衆構造を、メタゲノム技術を用いて明らかにした。健康な個体のデータと比較して同症のマナマコで生存割合が高い微生物の推定を行った結果、Tenacibaculum属細菌が症状の原因であると推察された。
研究グループは「原因微生物の分離を進め、感染実験を繰り返すことで感染動態の解明が期待できる。成果を蓄積することで効果的な防疫対策の考案が可能になり、安定的な種苗生産基盤の構築に資することが期待できる」とした。