■研究のポイント■
◎サプライズは、「その恩恵がなかったら」と想像すると感謝が強くなることを前提としているが、実際にそうなのか厳密に検討されていない
◎二つの実験から「その恩恵がなかったら」と想像しても感謝の度合いは高くならないことが示唆された
◎人と人のつながりを円滑にする感謝という感情反応について理解する上で重要な視点を提供
上智大学総合人間科学部心理学科の山本晶友特別研究員(PD)と樋口匡貴教授は、『「その恩恵がなかったら」と想像することで、感謝の度合いは高くなる』という仮説を、二つの実験を通じて検討し、この仮説は支持されないという結果を発表した。
突然の贈り物などで他者を喜ばせようとする、いわゆる「サプライズ」は、『「その恩恵がなかったら」と想像することで、感謝の度合いは高くなる』という仮説が正しいことを前提としている。しかし、今回の研究で、過去の文献レビューを行った結果、この仮説に対する厳密な検証はまだ行われていないことが示された。
そこで研究チームは、恩恵を受ける前後の状況を、受益者にシミュレーションしてもらう二つの実験を設計した。一つ目の実験は、『恩恵を受けると事前に予期していた場合よりも、恩恵を受けないと事前に予期していた場合の方が、より強い感謝の念を抱く』という仮説を、二つ目の実験では、『恩恵を受けた事後に、恩恵を受けなかったケースを想像した場合の方が、実際に恩恵を受けた状況を再び想像した場合よりも、より強い感謝の念を抱く』という仮説を検証した。
その結果、いずれの研究でも仮説は支持されず、「恩恵をもし受けなかったら」という想像をすることで、感謝の度合いが高まることはないという結果が示唆された。
この研究結果は、一般的に受け入れられている「サプライズ」に一石を投じるもので、人と人のつながりを円滑にする感情である感謝について、より理解を深める一助となると期待される。