広島大学の塩見利明教授らと福山通運の川口健吾の研究グループは、大型トラックの衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)の効果は限定的で、居眠り運転には効果がないと明らかになった。居眠り運転の検出法の確立とAEBSの改良に期待が集まる。
AEBSはセンサーで障害物を検知し、ブレーキ補助動作で衝突の可能性を減らす装置だ。研究グループは大型トラックドライバーの衝突事故1699件を分析。事故率と損害金額、居眠り運転かそうでないか、AEBSの登載を比較した。
調査によると、AEBS 搭載トラックと非搭載トラックの事故率を比較すると、非居眠り運転では事故率の低下を認めたが、居眠り運転では事故率に差はなかった。また、損害金額にも違いはなかった。
さらに、AEBSの効果を世代別に確認。非居眠りでは第1~3世代にかけて事故率が減ったが、居眠りでは減少傾向は確認されていない。世代間で事故損害金額を比べると、居眠り・非居眠り運転事故ともに、金額は低下していなかった。
グループは「居眠りのためドライバーの事故回避が遅れることで、AEBSの効果を発揮できていない」と指摘。居眠りを検知できるシステムと労働環境の改善の必要性を訴えている。