患者が最初に受診する総合的な診療「プライマリ・ケア」。この医療行為を定期的に受診している高齢者が対象に筑波大学が行った調査研究で、「必要な時に幅広い内容の相談ができる」などプライマリ・ケアのサービス内容が充実している患者ほど、医師の勧めで帯状疱疹ワクチン接種を受ける傾向にあることが分かった。この研究を行ったのは、筑波大医学医療系の稲葉 崇助教と慶應義塾大学医学部医学教育統轄センター/総合診療教育センターの春田淳志教授ら。
帯状疱疹は水痘(水ぼうそう)と同じウイルスが原因で起きる皮膚の病気で、加齢が大きな危険因子となる。高齢化が進むなか、わが国では罹患者が増加傾向にあり、80歳までに約3人に1人が罹患するといわれている。
2016年に国内で帯状疱疹ワクチン(弱毒生水痘ワクチン)の接種が可能となったが、接種者は非常に少ないのが現状。肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンなどについては、接種を受ける要因に関する複数の研究が存在するが、患者が最初に受診する総合的な診療「プライマリ・ケア」のサービス内容が充実している患者ほど接種率が高いことが明らかになっている。
一方、帯状疱疹ワクチンについては、接種要因を明らかにしたり、プライマリ・ケアの質との関連を調査したりする研究は、これまでなかった。
そこで稲葉助教らは、プライマリ・ケアを定期的に受診している65歳以上の高齢者を対象に、プライマリ・ケアの質の指標の一つである患者経験(PX)と帯状疱疹ワクチン接種との関連を検討した。その結果、PXが高い、即ちプライマリ・ケアで受けているサービス内容が良い患者の方が、医師が帯状疱疹ワクチンを勧めると、実際にワクチン接種を受ける傾向にあることが分かった。
この研究だけでは原因と結果の因果関係を直接証明することはできない。しかし、プライマリ・ケアで患者が必要とするサービスを十分に提供した上で、医師が帯状疱疹ワクチン接種を呼び掛けていくことで、帯状疱疹ワクチンの接種率が向上する可能性を示唆しているという。