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地震予報アプリを開発 ブレイン・内山義英代表の奮闘 「被災者の命を守り、犠牲者をゼロにしたい」

ブレインの内山義英代表

「地震予報は可能だ」―。地震予報のサービスを行う「ブレイン」の内山義英代表はそう強調する。全国に設置した観測装置とサービスを用いて、国民の命を守りたいと話した。内山代表に、地震予報やその方法などについて話を聞いた。

■地震の高確率予報に成功

地震予報とは、全国18カ所に設置された観測装置などを用いて、クジラや象に聴こえることで知られる低周波音と地面を流れる地電流、前震活動を調べて地震を予報するものだ。低周波音は地震の1~2カ月前に、地電流は1~2週間前に発生する。前震活動は短くて数時間前に起きる現象だという。それら3種のデータを使って震災を予知している。

実際にブレインは、大地震では世界で初めて、2016年の熊本地震や18年の北海道胆振東部地震、今年の能登半島地震の予報に成功している。先日の日向灘地震も事前に察知することができたという。

その確度の高さからも、内山代表は「システムとしてはほとんど完成した」と説明する。だが、社会的な認知度がまだ少ないため、実績を積み上げて世界の人々に知ってもらう必要があると述べている。

全国に設置されている観測装置

■シミュレーターと現実の震災は違う

内山代表は大手ゼネコンで勤めていた時代に、阪神・淡路大震災(震度7)が発生した翌日に被災地を訪れたと振り返る。崩壊した建物を調べていると、現地で震度7が再び来るのではと恐怖にかられる強い余震に襲われた。実際の振動とシミュレーターでは感じる恐怖は全く異なったという。

「大きな揺れだが、さらに大きな本震がくるかもしれない」。地震を体感して、そのように想像したと説明。そうした体験からも地震情報を事前に知ることが、いかに大切かを学んだと話してくれた。

だが、地震の予報は容易ではなかった。働きながら寝る間を惜しんで、地震の波形を1万以上調査。さらに、地電流の観測装置を自費で作成して全国の観測地点へ行って設置している。設置場所は人の往来などの影響を避けるため地方の僻地となる。そのため、メンテナンスや維持も大変だという。

令和6年能登半島地震を予測する「ゆれズバ」の地震予報画面

■アプリ「ゆれズバ」、メールで命を守る

どのように人々に情報を届けているのか―。内山代表はアプリ「ゆれズバ」と定期・臨時配信を行うメールとSMSだという。主にアプリは絵で、メールは文字で情報を発信している。

ゆれズバでは地震の発生可能性を青、オレンジ、赤ナマズで示す。青は震度4以下、オレンジは6弱以下、赤は震度6強以上が発生する危険度を表す。利用者が登録した特定の地点の予報情報を受け取ることができる。

メールサービスではメールマガジンの形で、1000文字以下の文章にして読者へ情報を配信している。内山代表はメールの長所として「その大地震の警報が出た場合は震度の予報や津波高さの情報が送られる点だ」と話す。

■地震の犠牲者をゼロに

1つの観測地点でも機器の設置に数百万円を要した。身体や費用面で負担も大きい仕事だが、内山代表は「社会貢献をメインの目的でやっている」と言い切る。「何年先か分からないが、民間への普及に加えて公的機関に取り入れてもらい情報を伝えたい」と語った。

内山代表は大震災の犠牲者をゼロに近づけたいと目標を述べる。「何千年、何万年前から震災で数え切れないほどの人が亡くなっている」と熱を帯びた口調で話す。「それが続いていてどこかで食い止めたい。それが私の今の目標です」。

地震への恐怖や社会貢献の気持ちから、起業して命を守るために奮闘する内山代表。ブレインによって地震予報が当たり前になる未来が楽しみだ。