糖尿病治療で歯周病が改善するイメージ図
大阪大学の井上萌大学院生と久保庭雅恵(くぼにわまさえ)教授らの研究グループは、糖尿病の集中治療のみで歯周病の炎症状態が改善することと、治療前の全身状態によって集中治療に伴う歯周組織の反応が異なることを明らかにした。グループは「糖尿病と歯周病の相互関係のメカニズムの解明の一助となる」と評価している。
研究グループは、29人の2型糖尿病患者に対し、2週間の入院下での糖尿病の集中治療を行い、治療前後の全身的な臨床指標や歯科的指標を計測して解析した。研究では、歯科的な介入は行わず、糖尿病治療のみを実施している。
その結果、糖尿病治療により2週間の血糖コントロール状態を反映する「グリコアルブミン」だけでなく、歯周病の炎症程度を示す 「PISA」も改善した。
そして、PISAの改善度の大小により被験者を2つの集団に分けて解析を行った。PISAが改善した群では、治療前のインスリン分泌能力を示す「Cペプチド」が有意に高値を示した。かつ糖尿病性神経障害の指標である「CVRR」や末梢血管障害の指標である「ABI」が有意に高値(低い重症度)を示した。
このことから、糖尿病患者で歯周病が大きく改善する患者らには、インスリン分泌能が高く、糖尿病性神経障害や末梢血管障害の重症度が低い特徴があると判明している。
久保庭教授らは「この研究成果により糖尿病患者の歯周病の発症や重症化予防のために、糖尿病初期からの医科歯科連携が促進されることが期待される」としている。