筑波大学の征矢英昭教授らは29日、習慣的な軽運動が恐怖記憶を消し、脳由来神経栄養因子(BDNF)が関与すると明らかにしている。運動を基盤とした治療の開発などにつながりそうだ。
精神疾患の一つに心的外傷後ストレス障害(PTSD)がある。近年、運動がPTSDの予防や治療に有効だという報告がされているが、効果的な運動条件やその神経分子基盤は明らかになっていない。
研究では低強度運動が恐怖記憶の消去に有用か、その神経分子基盤としてBDNFが関与するのかをネズミを使って検証した。検証ではランニングマシンによる運動で「低強度運動群」と「中強度運動群」、「安静群」の3集団を設けた。
その結果、運動効果に強度による差はなく、低強度運動でも十分に恐怖記憶の消去を促せると分かっている。さらに、BDNFを阻害する薬を投与すると、運動効果が消えたことから恐怖記憶の消去はBDNFシグナリングが関係すると判明した。
研究グループは「運動継続性を担保しやすい低強度運動でも恐怖記憶消去に有効であるという知見は、精神疾患に対する研究への応用や運動を基盤とした治療プログラムの開発につながる可能性がある」としている。