東京理科大学の松本朋子准教授らのグループは、医療保険から得られる見返りを伝えることで負担の増額を人々が許容するか検証した。その結果、多くの国民は将来利得を過小評価していると分かったが、負担増額への支持は高まらなかったという。
研究では日本人4367人を対象にオンラインでアンケートを実施。高齢者が制度から受けられる給付額を提示した介入群とそうでない集団に分けた。介入した場合には、財政維持が難しくなる可能性を説明したグループとそうでない団体に分けている。
結果、回答者の約80%が老後の期待利益を過少に判断しており、国民の多くが得られるメリットを正しく認識できていないと推測された。だが、正確な情報を提供しても負担増に対する肯定意見は生まれなかった。
また、財政リスクを認識した回答者は、医療保険から得られる便益の情報提供による効果は見られなかった。だが、認識していない人は3割程度、支持を増加させた。
グループは「保険料引き上げの支持を獲得するためには、期待できる給付額を知るだけでなく堅実な財政の実施が不可欠だ」と説明している。