岡山大学の墨智成(すみともなり)准教授らのグループは、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種と抗ウイルス薬による予防効果を明らかにし、それらの併用が後遺症の回復に有効である可能性を見いだしたと発表した。後遺症の安価な治療法として利用することが可能だとし、予後改善に貢献する可能性が期待されている。
新型コロナの後遺症としてせきや倦怠(けんたい)感、睡眠障害などがある。治療のための特効薬は開発されておらず、症状を緩和する対症療法が行われているのが現状だ。ワクチン接種や抗ウイルス薬の投与が後遺症予防に有効とされてきたが、作用機序などについて十分な知見はない。
研究では、感染後の残留ウイルスによる後遺症患者に対する抗ウイルス薬投与およびワクチン接種によるウイルス量の変化を調べた。その結果、ワクチン接種はウイルス量の一時的上昇を示した後、治療前のウイルス量を大きく減らした。その減少効果は1年以上継続することが分かったという。
さらに、ワクチンと抗ウイルス薬の同時利用を試みると、ワクチンのみで観測されていたウイルス増加を抑制し、長期間にわたってウイルス量を減少させることに成功したとしている。グループは同時併用が後遺症の有効な治療法となる可能性が示されたとした。
墨准教授らは「担当医の適切な指導の下、後遺症に悩まされている患者の方々の少しでも助けになれば」と説明している。