東北大学と海洋研究開発機構(JAMSTEC)、仏ソルボンヌ大学の共同研究チームは22日、低緯度海域の一次生産を支える栄養塩の半分以上は光がほとんど届かない同海域の「トワイライトゾーン」から表層に運ばれてきたものであると発表した。同日付の英科学誌「ネイチャー」に掲載されている。
共同研究チームは、過去数十年の正確な海洋観測のデータによって、トワイライトゾーンに大量の栄養塩が貯まっていること、その大半は海の表層から沈降などによって運ばれてきた有機物がバクテリアにりその場で分解されてできたものであると示した。
トワイライトゾーンの栄養塩は、これまでの仮説では「その大半が海洋循環により南大洋の表層から低緯度海域にもたらされている」とされてきた。だが、その場の下層のトワイライトゾーンで再生された栄養塩が表層に供給されて、一次生産と生態系を支えていることが示唆されている。
実際にスーパーコンピューターを使って計算したところ、低緯度海域の一次生産を支える栄養塩の53%は、低緯度海域のトワイライトゾーンで再生された栄養塩だった。一方で、南大洋の表層から遠く運ばれてくる栄養塩は、低緯度海域の一次生産の 7%を支えるに過ぎないと分かった。
研究グループは「海洋生態系の将来予測の不確実性を低減させ、漁業など海洋の生態系サービスの持続可能な利用に有益な知見を提供することが期待される」と評価している。