実験で使ったシロイヌナズナ、(左)野生株(右)TGA1またはTGA4の欠損株
名古屋大学の大久保祐里助教らの研究グループは23日、植物が葉の窒素需要(空腹や満腹)に応じて根の窒素栄養の吸収量を調節する仕組みを解明した。同日付の英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載されている。
窒素は植物の成長に最も重要な栄養素の一つ。主に硝酸イオンを根から吸収しているが、それは葉からのシグナルによって調節されている。研究では、葉の窒素需要を根に知らせる信号として、既知の空腹シグナルに加えて、満腹シグナルが存在することを発見した。
さらに研究では、根の空腹と満腹シグナルと結合して窒素吸収に必要な遺伝子群の発現を制御するタンパク質「TGA1」「TGA4」を発見。TGA1と4 を欠損した植物は土壌の窒素量が変動する環境に適応できず、葉が小さくなるなど正常に育たないと分かった。
研究グループは「これらの結果は、刻々と変動する土壌窒素栄養環境への植物の適応の仕組みを理解する上で重要な手がかりとなり、今後の農業分野への応用も期待される」とコメントしている。