西野麻知子博士撮影
京都大学の成田哲也・同大生態学研究センター助手、中野伸一教授らのグループは今月、琵琶湖の湖底に生息する水生ミミズの個体密度と種組成の変遷を調査。環境要因だけでなく捕食者の存在が、地域で優勢な動物を変化させていることを明らかにしている。
グループは1966~2000年まで琵琶湖の北湖の水深73mで底生動物のサンプルを採集し、ホルマリンで保存した。種ごとに計数し、体重を測定。水温やエサ量の指標となる泥中の窒素量など環境要因も調べた。
その結果、湖が富栄養化した1960~80年代前半は水生ミミズ「エラミミズ」が優占しており、後半からは「ユリミミズ」と「イトミミズ」が底生動物の中では優位だった。
優占種の変遷は、琵琶湖に生息する「イサザ」など魚類による捕食が重要との解析結果が示された。つまり、底生動物の均質性が長期的に変化する理由は、生物の「食う」と「食われる」の関係が影響していたと推測されるという。
グループは「生物は環境条件の変化に対してある程度は耐えられるが、捕食者からのアプローチが生物の生き残りに大きく影響している可能性も示した」とし「温度や酸素、pH(水素イオン濃度)などの物理・化学環境だけでなく、生物についての長期観測も重要であることを示した」と紹介している。