岡山大学の高橋賢准教授と成瀬恵治教授らは、マイクロチップで人の臓器の機能を模倣する「臓器チップ技術」でミニ心臓モデルを開発したと発表した。8日付の英学術誌「サイエンティフィック・リポーツ」で公開されている。
臓器チップ技術は、微細な流路を持つ大きさ数センチメートルのチップ上で複数種類の細胞を共培養して臓器の機能を再現する技術だ。
研究チームはヒト人口多能性幹細胞(iPS細胞)由来の心筋細胞と線維芽細胞、血管内皮細胞をマイクロ流体チップで培養することで、人の心臓の機能を再現する「ヒト心臓チップ」を開発した。
このチップは心筋細胞を培養した実験系と比べて、精密に心臓の構造と機能を再現できる。特に心筋組織は800マイクロメートルの厚さで自発的に強力な収縮を示す。ノルアドレナリン投与による心拍数の上昇など薬物への反応を再現できるという。
動物に有効とされてきた薬剤の9割は人には効果がない一方で、生物を犠牲にすることは倫理的な問題もあった。研究チームは「これまで実験動物に依存していた薬効・毒性試験が、動物を用いずに実施できる可能性が広がる」としている。