ホホジロザメと楯鱗
東京工業大学の佐山将太朗大学院生らの研究チームは5日、ホホジロザメの標本17カ所から皮を採取し、サメの鱗である「楯鱗」(じゅうりん)の形状を計測した。その結果、突起の組み合わせが低速から高速まで広い速度範囲に適している可能性が示唆されている。
サメは楯鱗という硬い鱗で覆われ、回遊性のサメの鱗には頭から尾の方向に走る突起がある。それは、物体表面の摩擦抵抗を低減する構造「リブレット」の発想の源として知られているが、楯鱗が遊泳時に流体抵抗を少なくするのかという疑問の答えは確認されていなかった。
グループは楯鱗の突起をリブレットと見なして、体の先端からの楯鱗の距離と突起間隔から、摩擦抵抗を最も小さくする遊泳速度を計算した。その結果、隣り合う大小突起は遊泳速度5~7m毎秒に適し、大突起同士の広い間隔は速度2~3m毎秒にあっていると判明した。
これは記録された野生のホホジロザメの瞬間的な最高速度と長距離移動時の速さに近い値であったという。左右の小突起が高速に中央の大突起が低速に適合していると示されている。
また、この計算を古代の巨大ザメ「メガロドン」に適用すると、最適遊泳速度は5.9m毎秒ホホジロザメの3.7倍の体長があるが、速度はほとんど変わらないと分かっている。
研究グループは「研究で提案した計算方法により、さまざまな回遊性のサメや化石しか残っていない古代ザメの遊泳速度を楯鱗の突起形状と全長から流体力学的に推定することが可能になった」と評している。