大阪公立大学の井原康貴大学院生らのグループは、肺がん患者のデータから2つの治療法と生存期間の関係に対する肥満度を示す「ボディマス指数」(BMI)の影響を検証している。肥満の患者は BMI が低い患者に比べ死亡リスクが小さいことが明らかになっている。
肥満は糖尿病などの生活習慣病および非小細胞がんなどの発症リスク上昇と関連することが報告されている。一方で、抗がん剤による化学療法を受けた患者の生存率は、正常体重の人と比べて高いことが分かっている。これは「肥満のパラドックス」として知られており、従来の抗がん剤と免疫療法のどちらが肥満がん患者の生存率を改善するのか評価した。
研究では医療系IT企業「MDV」が提供する診療報酬に関するデータを用いた。データベースには3800万人の患者が登録されている。
データから免疫療法または従来の抗がん剤を受けた進行性非小細胞肺がん(進行性NSCLC)患者のBMIと死亡リスクを解析した結果、肥満の患者はBMIが低い患者よりも死亡リスクが低いことが示された。これは、進行性NSCLC患者に肥満パラドックスが存在することを示唆している。
また、免疫療法を受けた進行性NSCLC患者におけるBMIと死亡率の関係から、免疫療法を受けたBMI 28kg/m2未満の患者は、従来の抗がん剤を受けた患者と比較して死亡率が有意に低いと分かった。
さらに、この相関関係はBMI 28kg/m2以上の患者では観察されず、肥満がん患者では免疫療法の効果が不十分となる可能性を示唆する基礎研究を支持する結果となった。
グループは「肥満の進行性NSCLC 患者にとって免疫療法が必ずしも最適な第一選択療法とは限らず、従来の抗がん剤の使用も考慮すべきである」とまとめている。