千葉大学の佐々木利奈特任研究員らは米テキサス大と共同で、性暴力の被害者を非難するなど誤った偏見「レイプ神話」をどの程度受容しているかを測定する「REAL尺度」の日本語版を開発した。全体の数値として、日本がアメリカよりも18点以上高いことが分かっている。
REAL尺度は2022年にアメリカで作成されたレイプ神話の受容度を測定するものさしだ。20項目計80点で評価する。例えば、代表的な神話には、「もし女性がはっきりとノーを言わなければ、性犯罪と主張できない」などがある。
研究グループは18~65歳までの男女1000人にオンラインでアンケート調査を行った。日本語版REAL尺度による結果をもとに、レイプ神話の受け入れ度が高い人の特徴やグループが作ったオリジナルREAL尺度を用いてアメリカで実施した先行研究結果との比較、日本人の性犯罪に対する偏見の心理的特色を検討した。
その結果、日本のREAL尺度得点は、女性に比べて男性が6点以上高く、全体ではアメリカよりも日本の数値が約7倍も大きいと明らかになった。このほか、アメリカでは世代による得点差は見られなかったが、日本では若い世代(18~29歳)の得点が高いことが判明している。
また、日本の実施者の性犯罪に対する偏見の特性として、「自分の行為を過小評価し性犯罪ではないとする心理」と「暗黙の同意が得られていると信じてしまい、自分の行為は性犯罪には該当しないと考える心理」に分けられると確認された。
佐々木特任研究員は「アメリカ人と日本人のREAL得点がこれ程までに違うことに非常に驚くとともに、極めて深刻なこの状況を、早急に改善しなければならない」とコメント。「被害を訴えても逆に周りの人に傷つけられてしまう現状の改善を目標に、研究を続けていきたい」としている。