文教速報デジタル版

BUNKYO DIGITAL

文教速報デジタル版

BUNKYO DIGITAL
超音波を人の耳で受容する仕組みを新たに発見 高い周波数で細胞活性化 岐阜大と新潟大

岐阜大学の任書晃教授と新潟大学の崔森悦准教授らのグループは、モルモットの耳にある感覚機関「蝸牛」(かぎゅう)に動物が聞くことができない高い周波数を持つ超音波を与えると、蝸牛の入り口に位置する「有毛細胞」が超音波に同期して超高速で活性化することを世界で初めて実証した。

20 kHz(キロヘルツ)を超える超音波はイルカやコウモリなど限られた動物が聴取可能だ。だが、人でも骨を介した音刺激を用いれば聴くことができる。この現象は超音波聴覚といわれ、発見から75年間なぞにつつまれていた。

研究では全身麻酔をかけたモルモットに可聴域を超える超音波を与え、神経の興奮と音を電気に変える有毛細胞の電流を測定した。通常、側頭骨を介した音刺激でのみ聴こえない超音波が知覚されるが、中耳の骨「耳小骨」に超音波刺激を加えるとそれを知覚できた。つまり、蝸牛は本来超音波を受容できることが判明している。

さらに、先端光学計測装置「光干渉断層撮影装置(OCT)」を使って、音が有毛細胞に引き起こす1000億分の1センチの振動を蝸牛のフック部で測定。フック部は可聴域の上限付近の高い周波数の音を受け取る場所。

振動を解析すると、有毛細胞は通常受容する可聴域の周波数に加えて、その2、3倍の周波数に応答したという。これが、可聴域を超える超音波の感知を可能にしている。グループは「超音波聴覚が有毛細胞機能を反映することが明らかになり、今後難聴の早期診断や新しい補聴方法の開発などにつながる可能性がある」と説明している。