九州大学の松清修一教授と千葉大学の松本洋介准教授は29日、太陽圏の外縁で生成されることが知られている宇宙線の加速課程を調べ、宇宙線の種になる陽子の初期加速課程を世界で初めて明らかにしている。米学術誌「アストロフィジカルジャーナル」に掲載されている。
宇宙線は宇宙誕生の初期から存在し、エネルギー輸送や星の形成、銀河や生命の進化にも影響を与えていると考えられている。宇宙利用のためにはそれから宇宙飛行士や宇宙線を守ることも大切だ。
宇宙線が生成される課程は分かっていない。宇宙プラズマ衝撃波によって作られるモデルが有力視されているが、そのためにはもとになる粒子が衝撃波周辺にたくさん存在している必要がある。だが、そのための条件や種粒子がどう作成されるかは分かっていなかった。
グループは種粒子の生成機構の解明に取り組んだ。太陽外縁に存在する陽子成分「ピックアップイオン」の時間発展する衝撃波構造の挙動をスーパーコンピューターで解析している。
その結果、衝撃波面に対して磁力線が斜めに向くこと、衝撃波上流で励起される大振幅電磁波が一部のピックアップイオンを効率的に加速すること、加速の初期段階でピックアップイオンがサーフィン加速と呼ばれる特徴的な動きを示すことなどを明らかにしている。
2025年にアメリカ航空宇宙局(NASA)が探査機の打ち上げでは、種粒子の観測が行われる。グループは「粒子の全天マップが得られれば、広い太陽圏のどこで種粒子が作られているかの情報が得られ、衝撃波における宇宙線加速の理解が格段に進む」としている。