結膜リンパ腫
岡山大学の松尾俊彦教授と田中健大講師は、珍しい目の疾患「結膜リンパ腫」の患者を調査し、自然消退する場合が多いことを確認した。長期にわたる経過観察の結果、残存病変の多くは自然に消えることが分かり、無治療でも問題ないとしている。
結膜リンパ腫は結膜の奥に見られる稀な病変。全身のリンパ腫が起こす「二次性結膜リンパ腫」と結膜だけに発症する「発現性結膜リンパ腫」に分かれる。リンパ腫を完全に切除すると視機能を維持できなくなってしまう。その上で、切除後に残った患部に対して追加治療が必要かどうかは分かっていなかった。
チームは1992~2023年の32年間、31人の診断記録と所見を調査した。
具体的には初回治療として放射線照射(30 Gy)を行ったのが5人。22年前に結膜リンパ腫に対する再発MALTリンパ腫に対して放射線を照らしたのは2人であった。他の24人は切除後、追加治療は行わず経過観察した。
切除後無治療の24人中5人では、半年~6年後に病変が再発し再度切除した。病理検査でMALTリンパ腫と確定。再発した5人中1人は6年後の再々発であるため放射線照射を行った。残りの4人では追加治療なく経過観察後、残存病変は自然に消えていた。
つまり、病理診断のため切除して残存病変がある場合も経過観察で自然消退することが多いことが分かった。もし結膜病変の再発が見られた場合、再度切除して病理検査を行って診断を確認したのち経過観察してもよく、放射線照射を行ってもよいと考えられるという。