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人間による捕獲がシカを高地へ 富士山の生態系保全に悪影響 東京農工大など

富士北麗の二ホンジカ

東京農工大学の髙田隼人特任准教授と山梨県富士山科学研究所の中村圭太研究員らのチームは、山梨県の富士北麓で糞塊調査を実施し、どの場所にニホンジカが分布しているかを解明した。生態系保全の優先地域である標高の高い地域の植物に負の影響をもたらしていると指摘されている。

チームは2018年6~8月に富士北麗の60地点を調査し、シカの糞塊数を空間分布の指標として使用した。1986個を集めて、非捕獲地域、人間の居住地から遠い場所、ササの現存量の多い場所にその量が偏っていることが示されている。

シカの管理捕獲は標高1000~1500mで行われており、生息地を高標高域にシフトさせている可能性がある。

また、捕獲地域と非捕獲地域でシカがエサとして好む広葉草本や広葉樹の現存量を夏に比較すると、捕獲地域に良質な植物が多いと分かった。さらに、これらの代替食物としてササが役立つと確認された。

高田特任准教授らは「シカが人間からの捕獲圧に柔軟に対応し、恐怖の景観を確立することにより分布をシフトさせていることを明らかにした」とし「今後、さらに多くの地域で人間による捕獲がシカの行動に与える影響を明らかにしていく必要がある」と説明している。