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遺伝子「カドヘリン11」が不育症に関与 病態理解に貢献 東大・名古屋市立大・阪大・理研

東京大学と名古屋市立大学、大阪大学、理化学研究所のグループは、臨床的に原因が指摘できない不育症のゲノム解析を行い、ヒト白血球抗原(HLA)遺伝子の遺伝子多型がその発症に関与することを明らかにした。また、細胞接着分子である「カドヘリン 11」(CDH11)遺伝子が発症に関与することを認めている。

不育症は流産あるいは死産が2回以上ある状態と定義され、国内では妊娠を望むカップルの5%が不育症にり患している。主な原因として抗リン脂質抗体症候群、子宮奇形などが知られる一方で、要因が特定できる症例は全体の半数に留まり、残りの半数は原因不明だ。

研究グループは原因が分からない不育症女性患者1728人から得られたゲノムデータと東大内にある「バイオバンク・ジャパン」の2万4315人の対照群女性から得られた情報を用いて解析を実施。不育症と関連する遺伝子多型「rs9263738」をゲノム領域であるMHC内に発見した。

さらに分析したところ、片親から受け継いだ染色体上に存在する遺伝子のセットが不育症の発症に予防効果を示すことが判明している。また、遺伝子機能を欠損させるCNVに着目して調べたところ、不育症患者ではカドヘリン11の機能を欠損させるCNVが多くみられることを突き止めている。

4大学のチームは研究成果について「不育症の病態における生殖免疫学の重要性に論拠を与え、その病態の理解が大きく進むことが期待される」としている。

成果は17日付の英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された。