4種類のアブラムシの虫こぶ
弘前大学と東京大学、京都大学、熊本大学のグループは、日本に広く分布する植物「マンサク」とそこに巣となる虫こぶを作る4種のアブラムシがマンサクの生息地に影響されながら種分化したことを明らかにしている。18日付の科学誌「Molecular Ecology」に掲載されている。
アブラムシなどの昆虫は植物の遺伝子を変えて、葉や芽などに住処となる虫こぶを作る。その形態や防御物質のような観察できる形として外に現れたものの関係を近縁な昆虫と比較できれば、遺伝子と表現型から評価できる。マンサクにこぶを作る「マンサクハフクロフシ」と「マンサクイガフシアブラムシ」「マンサクサンゴフシアブラムシ」「マンサクイボフシアブラムシ」を比べた。
グループは全国で虫こぶを採集した。そして、植物組織と内部のアブラムシの遺伝子解析を実施。マンサクとアブラムシのそれぞれの系統樹を作成して比較した。その結果、地理的な分化パターンが両者で一致しており、マンサクの地理的隔離がアブラムシの隔たりをもたらし、種分化を促進したことが判明している。
また、防御物質「フェノール」の生合成に関連する遺伝子の発現量が、ハフクロよりもイガ、サンゴ、イボの虫こぶで多いことが認められた。
グループは「アブラムシの進化は、マンサクの地理的な分布変遷の影響を強く受けながら、長い時間スケールで形成されてきた」と紹介。「虫こぶを形成する昆虫にみられる、巧みな戦略の進化過程の一端を明らかにできた」とコメントしている。