大阪大学の三谷はるよ准教授と京都大学の近藤尚己教授らのグループは、約 2.9 万人の調査データを使って、地域・学校での肯定的体験が逆境的な家庭環境で育った子どもが負う疾病リスクを半減させることを世界で初めて発見した。
虐待やネグレクトなど子ども期に逆境体験をした人ほど成人となってから、心臓病やがんなどさまざまな疾患にかかりやすいと分かっていた。だが、悪影響を緩和する保護要因は確認されていなかった。
研究グループは18~82歳の成人2万8617人のデータを用いて、18歳までに体験した肯定と逆境経験、現在の慢性疾患の関連性を検討した。
その結果、逆境の影響を統制した上でも、コミュニティ関連の肯定的体験は、成人期の疾患の可能性を低下させた。また、肯定的体験の数が増えると、逆境と疾患の関連性は弱まっていた。
具体的には、逆境を1つ以上体験している対象者のうち、3つ以上の良い体験がある場合に重度のうつや不安障害の有病率は50%以上低くなったとしている。ほかにも狭心症や心筋梗塞、がんなども4~5割のリスク減が認められたとしている。
グループは「地域や学校で子どもの肯定的体験をはぐくむ取り組みの推奨が期待されるとしている。