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春と秋で別のハリガネムシが宿主操作 魚類にエネルギーを提供 京大と北大

(左)春(右)秋のハリガネムシの宿主

京都大学の朝倉日向子大学院生らの研究グループは、寄生虫「ハリガネムシ」と陸生昆虫の宿主の寄生関係が、複数の季節的経路をもたらすことを示した。17日付の英学術誌の電子版に掲載されている。

ハリガネムシは、宿主を操作して自らが繁殖をする河川へと入水させる。この結果、河川の魚類にエネルギーをもたらし、間接的に河川内の底生無脊椎動物や河川生態系に影響を及ぼす。チームはハリガネムシが春に甲虫へ、秋にバッタ類を操作していることを発見した。だが、系統の異なる虫なのか、季節ごとにエネルギーの経路を作っているかは不明であった。

研究チームは北海道の魚類の胃の内容物を3河川で春、夏、秋、冬に調査。得られたものは宿主候補の昆虫とハリガネムシ、その他に分類している。

ハリガネムシのミトコンドリアを解析した結果、春に採取されたハリガネムシは「Gordionus 」属に、秋は「Gordius」属に分けられた。2属が季節別に甲虫とバッタ類を操作して入水させていると結論づけた。

魚に食べられたものを見ても、甲虫は春にサケ科に食べられており、夏には捕食されていなかった。一方で、バッタ類は秋のみエサとなっていた。

それぞれの虫が魚にとって重要な資源となっているかを比較すると、宿主を摂取したサケ科は河川の関係がなく春に1.1~1.7倍、秋に1.8~2.7倍高くなっていた。それぞれの時機にサケ科にエネルギーをもたらしていることが示唆されている。

朝倉大学院生は「研究で特定の寄生生物による宿主操作の影響と、宿主や寄生者の多様性についてを繋げる視点を提供できて嬉しく思う」とコメントしている。