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サルコペニアの治療に向けた薬品開発に寄与 筋肉形成のスイッチ分子を解明 筑波大

筑波大学の藤田諒助教らのグループは、酵素「DUSP13」と「DUSP27」を欠損したマウスは筋分化スイッチが働かず、筋再生が遅延することを発見している。加齢により筋肉量が減少する「サルコペニア」などの治療に向けた創薬につながる可能性がある。

骨格筋再生に必須の役割を担う「骨格筋幹細胞」は、損傷がない筋肉の中では眠った状態で存在する。だが、異常事態が発生すると活性化して筋肉の修復に必要な細胞を作る。それらはその後、一つの大きな筋細胞となるが、加齢や糖尿病などの疾患では異常が生じて、脆弱な筋線維を生み出す。これがサルコペニアや筋疾患につながるという。

研究グループは筋分化のマスター因子である「MyoD」を観察することで、骨格筋幹細胞にあるDUSP13とDUSP27は、MYODが直接制御する因子であると発見している。そして、DUSP13と27のノックアウトマウス(DKO)を作製したところ、筋再生の遅延が起こった。

その理由を確認すると、DKOマウスは骨格筋幹細胞が筋分化へと移行できない可能性を示した。そこで、野生型とDKOマウスから骨格筋幹細胞を単離して培養すると、野生型のみのが筋細胞が分化した。DKOマウスの筋分化力が低下していると明らかになっている。

グループはDUSP13が筋分化のスイッチを入れるきっかけとなるのかを検証するために、スイッチが入っていない未分化で増殖中の骨格筋幹細胞にDUSP13を過剰に発現させた。すると、骨格筋の分化を示すマーカー「MYOGENIN」を発現する細胞集団が現れると分かっている。

藤田助教らは「これら研究を通して骨格筋幹細胞が巨大な筋線維へ成熟するメカニズムを解明できれば、サルコペニアの予防や治療法の開発に貢献できる」としている。