広島大学の安藤俊範講師の率いる研究グループは15日、がん遺伝子「YAP」がRNA結合タンパクRBM39と合体することで、YAPの転写能亢進による増殖こう進と抗がん剤「indisulam」への体制を付与する新たなメカニズムを解明している。15日付の英科学誌「オンコジェネシス」のオンライン版に掲載された。
口腔がんは日本で年間約2万人が患い、がん全体の2%を占める。近年、り患と死亡率が増加傾向にあり、新たな治療薬の開発が望まれている。口腔がんに対するindisulamの効果は低いが、その理由は明らかになっていなかった。
研究グループは口腔がん細胞株を用いて、活性化し、核内に移行したYAPが結合している新たなタンパク質を探索したところ、これまでに報告のない結合分子RBM39を同定した。
グループはRBM39を過剰発現させることで、YAPによる増殖を促す遺伝子の発現が上昇することを発見した。次に、YAPがRBM39に結合することで、indisulamの作用に影響が出るのではないかと考えた。そこで、口腔がん細胞株でYAPを活性化させるとindisulamによるRBM39の分解が生じにくくなっていることが確認された。
グループは「YAPとRBM39の結合を標的とすることで、indisulamへの耐性を防ぐ新たな薬剤の開発が期待される」と評価している。