オガサワラシジミ、矢後勝也・東京大学博士撮影
兵庫県立大学と奈良教育大学、大阪公立大学など7団体は、国内で最も絶滅リスクの高いチョウ「オガサワラシジミ」の繁殖途絶の原因を解明したと発表している。12日付のオランダの科学誌「Biological Conservation」のオンライン版に掲載された。
オガサワラシジミは小笠原諸島にのみ生息するチョウ。環境省のレッドリストに含まれ、国内希少野生動物に指定されている。野生環境では2020年を最後に生きた固体が確認されておらず、生息域外保全でも繁殖の途絶が起こっている。
研究グループは2001~20年に確保された個体を解析して遺伝的な多様性を明らかにした。その結果、16年以降に多様性の減少が進行し、繁殖途絶直前では当初の約2割まで遺伝的多様性が減少した。それに伴い、精子数も減っていたという。さらに卵のふ化率は当初の10%にまで落ちた。遺伝子が近い個体同士が、交配したことが絶滅の一途をたどった要因と結論付けている。
グループは「本研究は、絶滅危惧種が繁殖途絶に至った集団遺伝学的な背景を明らかにした貴重な事例だ」と評し、今後について、絶滅危惧種の遺伝的多様性を明らかにし、減少させないような保全方針を確立する必要性があると述べている。