黄色ブドウ球菌に対するオゾンナノ水の作用=(左)蒸留水(右)オゾンナノ水
新潟大学の滝澤史雄医師らのグループは、空気と水から生成したオゾンナノ水が最近の殺菌と毒素を分解することを明らかにしている。安価で製造できるため、発展途上国での感染症や⾷中毒予防に役⽴つ可能性がある。米国時間10日付の米科学誌「プロスワン」電子版で、掲載されている。
オゾンガスはウイルスや細菌を殺菌し、タンパク質を分解する作用がある。だが、オゾンガスは水に溶けにくく、消毒液として使うことが困難であるという欠点がある。先行研究ではオゾンをナノサイズの泡にして水に溶解する「ナノバブル技術」を使ってオゾンナノ水を生成した。
一部の食中毒原因菌は、菌を死滅させても産生された毒素の残存により病気を引き起こすことが報告されている。研究グループは、オゾンナノ水の作用を解析した。
グループは薬剤耐性化が進行している黄色ブドウ球菌を材料に選出。それを培養してオゾンナノ水または蒸留水に作用させた後で、増殖させた。その結果、オゾンナノ水に作用させた集団では菌の生育を示すコロニーを確認することができなかった。
次に、食中毒の原因となる「エンテロトキシン」をオゾンナノ水と混合した。オゾンナノ水はエンテロトキシンを分解することが分かっている。さらに、歯周病や肺炎原因菌を生み出す毒素もなくすことが示された。
グループは「オゾンナノ水は地球環境への弊害なく、大量に生産可能だ」と説明。「医療現場での消毒や感染予防、食品産業での衛生管理などで実用化を目指す」と力を込めている。