記者会見をする研究グループ
大阪公立大学の植松智教授らのグループは、新規の溶菌酵素を探索するため毒性の強い「エンテロコッカス・フェカーリス」(E. faecalis)の解析を実施した。新規の溶液酵素「エンドライシン」の配列を同定し、精製に成功している。11日付の英学術誌「ネイチャー」の電子版に掲載された。
研究グループは、造血幹細胞移植患者46人の糞便メタゲノム解析を実施。30人の糞便中にエンテロコッカス属の細菌が増加していることを確認している。一部で毒性の強いE. faecalisの存在を確認し、移植患者の臓器を攻撃する「移植片対宿主病(GVHD)」に関わることを発見した。
造血幹細胞移植の治療では感染症から身を守るための抗菌薬を使用するが、E. faecalisは薬から逃れて増殖し続ける。また、毒性の強いE. faecalisを定着させたマウスはGVHDが悪化することが確認された。
研究グループはE. faecalisが抗菌薬から身を守るために形成しているバイオフィルムを破壊できる酵素を探索するための解析を実施。エンドライシンを発見した。
E. faecalisを定着させたGVHDモデルマウスにエンドライシンを投与すると、その悪化を抑制して死亡率を大幅に改善することを認めている。今後のGVHDの新薬開発につながることが期待されている。
グループの藤本康介准教授は「E. faecalis に特異的な溶菌酵素エンドライシンを同定し、世界に先駆けて生体内でのその有効性を示した」とし「研究成果は将来的なGVHDの新規予防法・治療法につながる可能性がある」と評している。