京都大学の西田聖大学院生らのグループは、神経変性疾患の一種であるパーキンソン病の歩行障害を代償する脳内ネットワークを解明した。そのネットワークの調整に前脳基底部にある「アセチルコリン作動性神経」が関係していることを示している。この知見は薬物療法やリハビリテーションの開発に貢献できるとしている。
研究グループはパーキンソン病患者56人を対象に歩行機能と認知機能、MRI画像、安静時機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を評価した。歩行機能は一歩にかかる時間など計29項目を通常歩行時と注意を認知的課題に向けさせた状態で計測した。
このデータを解析すると3つの歩行パターン「両課題条件ともに歩行が良い」と「二重課題になると歩行が悪化する」、「両課題条件ともに歩行が悪い」に分離できると分かっている。両課題で歩行が悪い群では、他の集団に比べて注意と遂行機能の低下が認められた。
安静時fMRI解析では、脳内ネットワーク間の機能的結合を解析した。その結果、前脳基底部のアセチルコリン作動性神経の障害が、パーキンソン病患者の認知的な歩行の代償に関係していることが示唆された。
研究グループは「パーキンソン病の歩行障害に対してアセチルコリン作動性神経系を刺激する薬物療法や注意機能や実行機能を高めるリハビリテーションによって、歩行障害に介入できる可能性を示している」としている。