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脳内の情報伝達を担う「グルタミン酸受容体」 シナプス形成に作用 精神疾患の治療法開発に貢献 慶応大

慶応義塾大学

慶応義塾大学の柚﨑通介教授らのグループは、脳内の神経細胞間をつなぐシナプスで情報伝達を担う「グルタミン酸受容体」が、シナプスの形成に貢献するシナプス形成分子として働き、記憶を制御しているとマウスを使った実験で発見した。9日付の米科学雑誌「セル・リポーツ」に掲載されている。

脳では神経細胞同士がシナプスを通して接続することで脳機能を支える神経回路が構築されている。シナプス形成を担う分子の働きを明らかにすることは、精神神経疾患の病態を解明する上で重要な課題だ。

研究グループは先行研究で、運動機能を支えるシナプス形成分子「C1ql1」と「Bai3」を明らかにしている。今回の発見ではシナプスで情報伝達を担う「カイニン酸型グルタミン酸受容体(KAR)」が、C1ql1とBai3で複合体を作りシナプス形成分子として働くことを確認している。

研究によると、KARを失った遺伝子変異マウスはシナプス形成が障害され、運動学習能力が著しく低下したという。さらに、このマウスにKARを導入すると脳内で新たなシナプスが生み出され、記憶能力が改善されることが認められている。

柚﨑教授らは「KARによるシナプス形成能に関する知見が、加齢や神経疾患に伴う記憶障害と種々の精神疾患の病態理解、そして、治療法開発につながる可能性がある」とコメントしている。