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気温も重要な駆動因 気候変動に対する乾燥地の知られざる感受性を解明(横国大研究G)

■研究のポイント■

◎年間降水量・気温・乾燥度と変動性が乾燥地生産性を駆動することを非線形時系列解析により解明し、世界に先駆けて、気候変動に対する乾燥地の感受性を広域的に可視化

◎これまで、乾燥地生産性は降水量によって主に駆動されると認識されてきたが、気温とその変動性も降水量と同程度かそれ以上に重要な駆動因

◎気候変動に対する乾燥地の感受性は、気候要因の時間遅れの効果、場所ごとに異なる植生の水分と温度ストレスへの耐性に左右される

◎生態系の複雑な動態を考慮することで、生物圏から気候システムへのフィードバックの正確な予測につながる

横浜国立大学の佐々木雄大教授は、鳥取大学の衣笠利彦准教授や、モンゴル気象水文環境研究所、米国ニューメキシコ大学の研究者らとの国際共同研究で、気候変動に対する乾燥地の知られざる感受性の可視化に成功した。モンゴル国全土に広く分布する48の草原サイトでの40年間の植物生産量および気候データを解析した研究の成果。

陸域で、広域的かつ長期的に野外で観測された時系列データは世界的に少なく、さらにそのような時系列データの複雑性ゆえに、気候変動に対する乾燥地の応答の理解には限界があった。

今回は、長期時系列データと非線形時系列解析手法を組み合わせることで、乾燥度の高いモンゴル南部地域では年間の降水量が増加しても生産量は必ずしも増加せず、またモンゴル全域を通して年間の乾燥度が改善されても生産量は必ずしも増えていない、といった感受性を発見した。

生産量は、降水量や乾燥度の変動性の増加に対して、より湿潤な北部地域で負に、より乾燥した地域で正に反応することもわかった。

この研究成果は、気候変動に対する乾燥地の応答の正確な予測に貢献するとともに、乾燥地の牧畜業や農業を気候変動下でいかに持続的に行っていくかを検討する上で重要な科学的根拠となる。

この研究成果は、国際科学雑誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)」に掲載された(8月21日米国東部時間午後3時付)。