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炎症を進行させる酵素「DCLK1」を発見 進行した肝硬変の薬剤開発に貢献 東京医科歯科大

東京医科歯科大学

東京医科歯科大学の柿沼晴教授らのグループは米カリフォルニア大学と共同で、肝臓内の細胞群(星細胞)で炎症を進行させるリン酸化酵素「DCLK1」を発見した。治療法がない侵攻した肝硬変に対する薬の開発が期待されている。米科学誌「The FASEB Journal」に5日付で掲載されている。

肝臓を構成する細胞である肝星細胞は肝硬変に深く関与することが知られている。研究グループは、炎症の調節因子と考えられる「A20」に注目。その機能を研究することで、慢性肝炎と肝硬変に対する治療法の発見や薬の開発につながるのではないかと考えた。

グループはマウスと人の肝星細胞を使ってA20の機能を解析。マウスの肝星細胞でA20を欠損させると、慢性肝炎が生じた。これはA20が慢性肝炎を抑制していることを示しているという。また、炎症の進行に関与する「ケモカイン」の異常な増加を引き起こしていた。

A20欠損肝星細胞を詳細に分析すると、ケモカインの増加を引き起こす分子としてDCLK1が重要と発見した。これを阻害することで炎症性星細胞のケモカイン誘導を抑制することに成功している。つまり、DCLK1を標的とした薬剤は、炎症性星細胞が肝硬変に病気を進行させることを防げる可能性を示している。

柿沼教授らは「治療薬が乏しいタイプの慢性肝炎が、肝硬変へ伸展してしまうことを阻止する治療標的としてA20、DCLK1があることが分かった。治療薬の開発が期待される」と評している。