慶応義塾大学
慶応義塾大学の香坂俊准教授と東京大学中丸遼特任研究員らは、不整脈の一種である心房細動患者について、特に亡くなった人でフレイル指標のステップアップが見られたことを明らかにした。
心房細動患者は80歳以上では10人に一人が、り患すると報告されている。直接命に関わることはないが、脳梗塞など塞栓(そくせん)症のリスクとなる。そのため、抗凝固薬を中心とした塞栓症予防を講じる必要がある。
研究グループは静岡県国民健康保険データベースを用いて、抗凝固薬治療が開始された65歳以上の心房細動患者6247例のフレイル重症度を解析した。
それによると「フレイルなし」7.7%、「軽度フレイル」30.1%、「中等度フレイル」35.4%、「重度フレイル」25.9%であった。そのうち、抗凝固治療開始時に「フレイルなし」であった症例は約半数が「軽度フレイル」に進行し、「重度フレイル」が「フレイルなし」または「軽度フレイル」に改善した例はおよそ7%だった。
臨床イベントの発生率を見ると、死亡や入院を要する血栓塞栓症、大出血は3年間でそれぞれ23.4%、4.1%、2.2%。フレイルが重症であるほど、死亡例は増加していた。死亡例の8割弱は1年前に中等から重度のフレイルであった。
研究グループは「高齢心房細動患者の大半がフレイルを有し、その多くが経時的にフレイルが進行あるいは死亡を含む臨床イベントを発症することが判明した」とコメント。「一方で重度フレイル症例が回復軌道を示す割合は限定的であり、フレイルを早期に同定することの重要性が示された」と紹介している。