高速りん光イメージ図
大阪大学の谷洋介助教と九州大学の宮田潔志准教授のグループは4日、高エネルギー状態から生じる発光であるりん光の効率の世界記録を更新し、高速りん光のメカニズムを解明したとしている。同日付の英科学誌「ケミカルサイエンス」の電子版に掲載されている。
りん光は高エネルギー状態の分子が電子スピンの向きを変えながら発行する現象。ディスプレイに使われる有機ELやがん診断に有用だ。これまでレアメタルを使ったりん光は速度が速いが、鉱物の産出量が少ないという課題があった。
研究グループはレアメタルを含まない有機分子「チエニエルジケトン」の発光を調べた。その結果、この分子のりん光効率が溶液中では最大38%で、世界記録を2倍以上も上回ることを解明している。高効率な理由はりん光の高速化にあることを明らかにしている。
一般的に純粋なりん光は存在しないが、今回の分子の三重項状態(※)には、発光性の強い別の状態が 1%ほど混合していることが認められた。このような強い状態混合が、高速りん光を可能にしたと考えられている。
グループは「研究成果により、レアメタルに頼らずにりん光を示す有機分子の設計指針が得られ、レアメタル材料を凌駕・代替する有機りん光材料の開発が期待される」としている。
※三重項状態
分子がもつ電子のスピン(自転のようなもの)の向きに関する量子状態。一般的な有機分子はスピンの向きが打ち消しあっているのに対し、三重項状態では電子がひとつだけスピンの向きを反転させて存在している。