北陸先端科学技術大学院大学など5団体の研究グループは、統合失調症の認知機能障害を回復する新薬になり得る脳移行性の皮下投与型ペプチドナノ製剤の開発に成功したと27日に発表した。
統合失調症は幻覚や妄想などの陽性症状、注意・集中力の低下などを特徴とする精神疾患で、人口の約 1%が発症している。り患者は日本では約 80 万人、世界では 2000 万人以上いるとされる。近年、神経ペプチド受容体VIPR2の活性化が発症に関連すると明らかになっている。
先行研究でグループはVIPR2を選択的に阻害するペプチドKS-133を発見していたが、脳に送り届けることが課題であった。また、血中から物質を脳組織に移す働きがあるたんぱく質LRP1に結合するペプチドKS-487を見いだしていた。
今回、脳に移行させるためにナノ製剤化を検討。KS-487 ナノ粒子に KS-133 を内包させた製剤を開発した。その効果を動物モデルで確認したところ、KS-133 と KS-487 を同時に搭載するナノ粒子が、動物の認知機能障害を健常レベルまで回復させることに成功している。
研究グループは今後について「今後、細胞や動物モデルなどを用いた更なる検討を行い、人での臨床試験によって、本ペプチド製剤の有効性と安全性を確認し、統合失調症の新しい治療薬として開発を進めていく」としている。