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ホウ素を利用した新たな膵がん治療法を開発 京大×近畿大×富山大×岡山大

ホウ素中性子補足療法(BNCT)のイメージ

岡山大学と京都大学、近畿大学、富山大学の共同研究で、難治性の膵(すい)がんを狙い撃ちするホウ素の薬剤を開発した。がんにあったホウ素薬剤を使って治療を行うことが重要であると証明している。

ホウ素と中性子の反応でがんを破壊する「ホウ素中性子補足療法」(BNCT)の治療成功のカギは、がんをたくさん食べてもらうことだ。

研究チームはがんの遺伝子検索を積み重ねて、現在臨床認可されているアミノ酸ホウ素薬剤 (BPA )の取り込み対象となるアミノ酸輸送体(LAT-1) の発現をがん横断的に調べた。すると、がんの種類によってその出現が異なっていると発見している。

BNCTが成功している頭頚部がんと悪性脳腫瘍、皮膚悪性腫瘍では高い一方で、膵がんをはじめとするがんでは LAT-1 の発現が低く、それらでは BPA 以外の薬剤の利用が良いと推測された。

特に腫瘍マーカー「CA19-9」で高い値を示す難治性の膵がんでは、糖(グルコース)の取り込み標的であるグルコース輸送体が大きな発現を示して、取り込み標的となるLAT-1は低いという結果がでている。

薬剤投与の観点から見れば、BPAは難治性膵がんの適応は難しく、糖を使った新たなホウ素薬を創ることでその弱点を克服できると考えた。それを踏まえて、グルコース結合のホウ素薬剤の合成に着手して成功した。

生み出した薬剤は、CA19-9高値の膵がんでの高い効果を示した。また、ホウ素薬剤のみでは毒性がないことを確認し、がんへの治療効果も認められている。人へのシミュレーションを行い、発展させれば治療が可能であるとしている。

グループは「ホウ素薬剤のラインナップ拡大により、がんに合わせた治療薬を選択することで効果的な BNCT をさまざまながんに対して応用することが可能になる」としている。