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造血に必要な新規遺伝子「Ahed」を世界初発見 白血病の治療に貢献する可能性 阪大

大阪大学の中井りつこ招へい教員らのチームは、マウスの変異胚性幹細胞(ES細胞)を使って、これまで機能未知であった新規遺伝子を発見した。これを「Ahed」と命名し、造血に不可欠な遺伝子であると明らかにしている。英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に25日付で掲載されている。

未だ役割が明らかにされていない遺伝子を発見することは、基礎科学のみならず、血液がんの原因を究明し新たな治療戦略を構築する上で極めて重要な課題だ。

研究グループは造血に関わる未知の分子を探索するため、ES細胞株と間葉系細胞(OP9)を共培養し血液細胞に分化誘導させることで、血球成熟に関わる重要な遺伝子をスクリーニングした。すると、ある遺伝子変異株で、血液細胞の産生が障害されていることを見つけ、Ahedを確認した。

グループはAhedのないマウスを作って解析したところ、胎児と生体で造血細胞が作成されなくなることを認めた。Ahed遺伝子が造血に不可欠であることを証明している。さらに、Ahed遺伝子の変異が血液がんで多く見られることを突き止めている。

これらの結果から、チームは造血幹細胞が骨髄で自己複製し、すべての血液細胞を作る仕組みや変異により血液細胞ががん化するメカニズムが明らかになる可能性があると説明。その成果は、新たな血液がん治療の開発につながると評している。

中井招へい教員は「本研究が1日でも早く血液がん患者さんたちのお役に立てる日が来ることを強く願ってやまない」とコメントしている。