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福島第一原発事故後の森林 放射性セシウムの自浄作用効果を解明 筑波大

筑波大学の高橋純子助教は21日、東日本大震災の福島第一原子力発電所事故後の森林調査から土壌の放射性セシウムの移行が、根による放射性セシウム吸収量や空間線量率を低下させる効果を持つことを明らかにしている。

原発の事故により放射性セシウムで汚染された地域の約7割は森林におおわれている。研究では2011~23年まで福島県川俣町のスギ林で、落ち葉がたまったリター層と鉱質土壌層、スギの細根のセシウム濃度を調査した。

それによるとリター層と土壌のセシウム量は17年まで時間と共に増加していた。スギに沈着したものが、落葉や雨によって落ちていったことが分かっている。その後、リター層から急速に土壌に移行していった。

また、スギ細根中のセシウム濃度は20年頃より減少していた。これは、スギの細根が集中する0~2cmの土壌のセシウム濃度が低下したためだと考えられる。研究グループは数cmセシウムの分布が変化しただけで、樹木のセシウム吸収が減ることを森林生態系の自浄作用とみなした。

高橋助教らは「間伐によってセシウムの下方移行が促進されるかどうかを検証して、自浄作用効果を活用した新たな森林除染方策の提案を目指す」としている。