早稲田大学
早稲田大学の野村亮太准教授は20日、音楽会場で観客が一体感を感じている時、同じ舞台で鑑賞する観客の生理的状態がそろう現象の一端を明らかにしたとしている。この発見は、劇場環境や視聴デバイスが感動体験の再現性に寄与する可能性を示しているという。
近年、劇場やスタジアムでデータ計測をする研究が多く行われるようになってきた。だが、それは脳波や心拍、皮膚電位など生理指標を報告するに留まる。このため、観客同士の振る舞いの同期はまだ十分分かっていなかった。
実験では参加者に共通の楽曲である「課題曲」とこれまでに最も感動した楽曲として選んだ「自由曲」をランダムに聴いてもらう研究を2〜7日ごとに4回行った。また、音楽鑑賞の前後に気分に関するアンケートに回答してもらった。
実験で同じ参加者から得られた心拍データは、異なる参加者から得られた心拍よりも聴取で同期することが確認された。同じ人の認知システムが共通するとみなせることから、課題曲などの入力に対する応答の確かさとしての信頼性が同期の鍵であることを示唆しているという。
研究の知見は心拍同期が音楽を聴くときのモチベーションの高さや気分の高揚ではなく、音楽を聴いた人が、脳内で処理して生理的応答が生じる際の信頼性に依存していることを示唆するという。これは、応答の確かさを高める仕組みを構築できれば、劇場での感動を高い確率で再現できる可能性につながるとしている。
野村准教授は「これからも音楽に限らず様々な舞台表現を対象にした実証研究を通して、言語化しにくかった経験知や実践知を理論化し、知見を現場にお返しできるように研究を進めていく」と力を込めている。