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植物油に含まれるリノール酸が食後の血糖上昇を緩やかにできる可能性

和歌山県立大学学医学部解剖学第一講座の山本悠太講師らの研究グループは、植物油に含まれるリノール酸を、グルコース液を投与する直前に投与すると、血糖値の上昇が緩やかになる現象をラット(ネズミの一種)で初発見した。

この効果はインスリン分泌のできない1型糖尿病モデルラットでも認められたため、食後に高血糖になりやすい1型糖尿病を含む糖尿病の患者さんへの応用が期待できる。さらに、アマニ油やエゴマ油などに多く含まれるαリノレン酸でも同様な効果が認められた。

ご飯やパンなどの炭水化物を食べると、腸で消化されて糖になると、吸収され血液中の糖濃度(血糖値)が上昇する。この血糖値の上昇に反応し膵臓からインスリンというホルモンが放出されることで血糖値は元に戻るが、インスリンの効き目が悪い2型糖尿病患者は食前の血糖が高いことや血糖がなかなか元に戻らないことがある。

食事に含まれる油は、小腸で消化され脂肪酸とグリセリンという栄養成分になり、小腸で吸収される。小腸には腸内の栄養状態を監視するさまざまなセンサーがあり、そのセンサーのうち脂肪酸の量を監視するセンサーとして、「GPR40」と「GPR120」という受容体が知られている。

GPR40に反応する薬を、食事1時間前に投与すると、食後の血糖上昇時に放出されるインスリン量が増えることで、食後血糖が速やかに下がる効果がラットで報告されている。また、GPR120に反応する薬を、2型糖尿病マウスに1か月以上投与すると、インスリンの効き目が改善することも知られているが、食直前にこれらセンサーに作用する薬を投与する効果については、これまで検討されていなかった。