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雨が地球を温かく、冷たくする効果を地球規模で解明 高精度な気候変動予測に期待 岡山大

太陽放射と地球放射のイメージ図

岡山大学の道端拓朗准教授は、雨や雪といった降水粒子が地球のエネルギー収支を変調させる効果に着目。気温や降水量への影響について解明することに成功した。19日付で、国際学術誌に掲載されている。

雲は太陽から入射する「太陽放射」を地球に再放射する機能と宇宙へ反射する「地球放射」の機能がある。

雲は太陽放射を宇宙へ反射することで地球を冷却する「日傘効果」と宇宙へ射出する赤外放射を地表へ再放出する「温室効果」を併せ持つ。世界のほとんどの気候モデルは雲から生じる降水粒子による放射効果を無視してきた。しかし、現実ではこれら効果が生じているため、その影響を考慮したモデルを開発することは重要な課題であった。

研究では大気中の降水粒子の質量・粒子数を予報し、放射効果を考慮可能な降水予報型スキーム「CHIMERRA」を使うことで、降水粒子が気温や水循環に及ぼす影響を評価した。

その結果、「中緯度域に多く存在する雪片により大気の断熱放射冷却が緩和されること」や「大気の放射冷却によって駆動される水循環が弱まる結果として全球平均降水量を約 4%減少させるポテンシャルがある」「極域の地表面気温に顕著な昇温が生じること」などが明らかになっている。

グループは「研究の結果は、大気・海洋・雪氷圏にまたがる根深い不確実性を基本的なメカニズムレベルで解きほぐす成果として位置付けられ、温暖化予測の高精度化を目指す各国モデリングセンターへの成果の波及が見込まれる」と評価している。