■研究のポイント■
◎意図的・人為的な頭蓋変形の習慣が日本の古代社会に存在したか否かは未解明だった
◎鹿児島県種子島にある広田遺跡から出土した頭蓋の形態を分析した結果、日本の古代社会で初めて意図的な頭蓋骨変形の可能性が強く示唆された
◎今後の調査で、東アジアや世界での頭蓋変形習慣の社会的・文化的意義について、新たな知見が得られる可能性がある
意図的・人為的な頭蓋変形は、歴史を通じて様々な文化圏で一般的に行われてきた。しかし、日本国内では頭蓋変形の可能性が指摘されるのみで、詳細な検討は行われておらず、意図的・人為的な頭蓋変形の習慣が日本の古代社会に存在したか否かについては未解明だった。
九州大学大学院比較社会研究院の瀬口典子准教授らの国際研究チームにより、古代日本における意図的頭蓋骨変形(ICM)の実践が明らかになった。
研究チームは、鹿児島県種子島にある広田遺跡から出土した頭蓋の形態に焦点を当て、2Dアウトラインベースの幾何学的形態分析と3D表面スキャンイメージングを組み合わせる新しいアプローチを採用し、これが意図的な変形なのかどうかを統計分析した。
結果として、広田遺跡出土の古人骨は他の頭蓋骨とは異なる、短く扁平な形態であり、矢状縫合とラムダ縫合に沿った窪みの存在により意図的な頭蓋骨変形の可能性が強く示唆された。
また、性別による違いはみられず、男女の両方で意図的な頭蓋骨変形が行われていたことも分かった。
動機はまだ不明だが、研究チームでは、広田の人々が集団のアイデンティティを保持するために頭蓋を変形させ、島外あるいはソトの集団との交渉を容易にした可能性があるという仮説を立てている。
日本の古代社会で意図的な頭蓋変形を確認したのは今回の研究が初であり、今後の研究によりこの習慣の社会的・文化的意義について新たな知見をもたらす可能性が示唆された。