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放射線や乾燥などに耐える最強生物「クマムシ」 ゲノム改変可能に 耐性解明に大きな前進 東大

クマムシへのゲノム編集ツールの注入

東京大学の國枝武和准教授らは、放射線の耐久性などさまざまなストレス耐性をもつ「ヨコヅナクマムシ」を用いて、標的遺伝子を改変した個体を作製する手法を確立した。クマムシにゲノム編集ツールを方法を生み出している。遺伝学などを発信する「PLOSジェネティクス」に13日付で掲載されている。

クマムシの耐性にはクマムシのみがもつ固有の遺伝子が重要であると知られている。それらが体の中でどのように働き、貢献しているのかを明らかにするためには、遺伝子改変クマムシを作成して影響を評価する必要がある。だが、遺伝子改変クマムシ作製に成功した例はなく、課題となっていた。

研究グループはさまざまな日齢のクマムシにゲノム編集ツールを注入して、各個体から生まれた子どものDNA配列を調べた。その結果、遺伝子が改変された子どもの個体が複数得られている。

そのほとんどは改変された配列が1種類のみであった。これはヨコヅナクマムシがメスだけで繁殖する生殖様式をとり、遺伝情報の伝達様式が特殊であるために起きる現象であると解釈された。

研究グループは「クマムシの遺伝子改変個体を作製する方法を確立したことにより、クマムシの耐性機構のみならず、進化発生学などの研究分野の進展も期待できる」とし「耐性機構の解明は、ワクチンや重要な生物材料の保存技術の開発につながる」と説明している。