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迷いで脳は運動を学習 「迷うな」という指摘は間違い? NICT×HONDA

実験イメージ

「迷うな」-。スポーツ指導の現場ではそのような指摘がとぶこともあるが、間違いかもしれない。情報通信研究機構(NICT)の羽倉信宏主任研究員らと本田技術研究所のグループは、運動の学習には決断の迷いが反映されていることを明らかにした。意思決定がされれば、革新度合いに関わらず同じ運動が行われるという従来の考え方を覆す新たな発見だという。

実験では被験者に画面に映った多数の点が全体的にどちらに偏っているかを簡単(迷いなし)と難しい(迷いあり)グループに分けて判断してもらった。その方向にハンドルを動かしてもらうが、運動を邪魔する仕組みが施されていた。

その結果、両グループで力に対抗して運動ができるようになった。だが、迷いのない集団に所属した人が、ある状況におかれると上手く抵抗することができなかった。また、迷いありにいた人が、そうでない状況に置かれても同じ現象が起きた。

さらに、簡単な表示をした場合は、ハンドルに反時計回りに邪魔をする力がかかり、そうでない画面を現した時は、時計回りに妨害する実験をした。すると、参加者は迷いの有無の後の二つの運動を同時に学習したという。これは、運動前の判断が、行動を区別する手がかりとなり、障害に対する別々の行動を学習できたからだとしている。

研究グループは脳が迷いを受け入れ、応じた運動を作り出すことでパフォーマンス低下を防いだと説明する。目的の運動を達成するために練習するのではなく、意思決定とセットで行う動きを学ぶ必要があり、新たなスポーツ指導の方法につなげることができそうだ。