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心不全の原因となる「拡張型心筋症」 白血病関連の遺伝子変異で予後が悪化 東大

東京大学の井上峻輔特任研究員らによる研究グループは、心疾患の原因となる「拡張型心筋症」患者のゲノムとモデルマウスを活用した解析をした。白血病関連の遺伝子変異が起きているが白血病になっていない「クローン性造血」が予後を増悪させることを明らかにし、その病態の一端を解明したと13日に発表している。

心不全は日本人の心疾患死因の1位に位置している。その原因となる病気「拡張型心筋症」は心不全となる理由として日本では最も多い。クローン性造血は拡張型心筋症を重症化させる候補の一つであるが、経過にどのような影響を与えるか分かっていなかった。

研究グループは拡張型心筋症を引き起こす遺伝子の変異を再現したマウスを生み出し、これにクローン性造血の要因となる「ASXL1」を生じさせた別マウスの骨髄を移植してクローン性造血のある拡張型心筋症のマウスを作製した。

このマウスでは心臓内の免疫細胞が活性化し、細胞に炎症を起こすたんぱく質を分泌することで、拡張型心筋症疾患のみのマウスよりもさらに心機能の低下や心臓線維化の悪化が確認されている。

グループは「クローン性造血があることで拡張型心筋症患者の生命予後をより悪化させることが分かった」と説明。「患者の予後予測をする上で有用であり、今後はさらにクローン性造血を標的とした新たな治療法開発が期待される」と評価している。